この恋は、絶対に秘密!
──ジュッと音を立てて、熱したフライパンに黄色の液体が広がる。
「よーし。一気に卵を流し入れたら、こうやってフライパンを前後に揺らしながら、大きく円を描くようにかき混ぜる」
「はい」
「3、4回混ぜて半熟になるだいぶ手前でフライパンの奥に寄せる、と」
「…うん」
投入された卵液は綺麗な半月の形に変わっていく。
鼻腔を刺激するのは食欲をそそるバターの香り。そして。
耳を刺激するのは、必要以上に近い距離で囁くようにオムレツの作り方を説明する“先生”の声。
彼は私の背中にぴたりとくっつくようにして立ち、フライパンの柄を握る私の手を大きくて骨張った手で包み込んでいる。
まさに“手取り足取り”教えてくれている状態だ。