この恋は、絶対に秘密!
「ちょっと待って」



ふいに腕を掴まれ、その衝動で持っていた眼鏡がカシャンと音を立てて地面に落ちた。



「ぁ……っ!」



その瞬間、自分が眼鏡を掛けていなかったことに気付く。


──うっかりしてた……!

私の顔を覗き込まれているような視線を感じながらも、目を合わせずに眼鏡を拾い上げる。



「悪い……!大丈夫?」

「えぇ!すみません、大丈夫です!」



でも眼鏡を外しているだけじゃバレないよね……?

そう思い込もうとしながら慌てて眼鏡を掛ける。そして。



「じゃあ、お疲れ様でした!」

「あ、和久井さん……!」



何か言いたそうにする岬さんを振り切り、俯きがちのまま逃げるように足早に立ち去った。


……薄々感づかれているかもしれない。なんとなくそんな気がする。

やっぱり、今夜を岬さんと過ごす最後の夜にした方が良さそうだ──。



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