この恋は、絶対に秘密!
耳に当て、しばらくして聞こえてきたのは不思議と安心させられる声。



『瀬奈お嬢様!?』

「汐美さん……ごめんね、朝早くに……」

『そんなことはいいんですわ!何かあったのですか?』



彼の声を聞いた途端、堰を切ったように涙が溢れ出す。



『……お嬢様?』

「迎えに、きて……」



ジーンズの上でギュッと握りしめた手の甲に、ぽたぽたと透明な雫が落ちていく。

なんだか迷子になって両親の迎えを待ちながら泣く子供みたいだ。


こんなふうになっている自分はひどく滑稽だけれど。

初めて恋を失う痛さを知った私は、涙を止めることは出来なかった。



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