この恋は、絶対に秘密!
美波ちゃんからの用件は“今夜飲みに行かないか”という、至ってシンプルなもの。

彼女と二人で飲みに行くだなんてのは初めての誘いだったが、俺もこの時ばかりは酒に頼りたい気分だった。

……優海への罪悪感から逃れたかったのだ、ほんの一時だけでも。



ただ、和久井さんが家で待っていることだけが気掛かりだった。

だからあまり遅くならないように帰ろうと決め、そこそこ仕事を終わらせたところで待ち合わせのバーに向かった。



駅前の、地下へと続く階段を下りた一角にある、暗くて洒落た雰囲気のバー。

木製の扉を開けると、カウンターに一人で座っているセミロングの髪の女性の背中が見える。

その背格好ですぐに美波ちゃんだとわかり、俺は彼女の隣のハイチェアに腰を掛けた。


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