この恋は、絶対に秘密!
──好きな人……


そう言われて、脳裏に今も家で待っているだろう可愛い猫のような彼女の姿が過ぎった。


グラスを持ったまま微動だにしない俺を、美波ちゃんが真意を確かめるようにその大きな瞳で見つめる。



「やっぱりそうなんですか?」

「さぁ……どうかな」

「しらばっくれてもダメですよ!
大事な人が出来たから……また傷付けたらって思うと、怖いんじゃないんですか?」



否定も肯定もせずに傾けたグラスを見つめるが、美波ちゃんの言葉は確信を突いているように思えた。



俺はよく気がつくタイプではないし、言葉や態度に出すのも苦手な方だ。

ずっと一緒にいたら嫌な想いをさせるかもしれないし、これからも仕事を優先しなければいけない時だってあるだろう。


そんな状態になって、また誰かを傷付けるのが怖いのだ。


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