この恋は、絶対に秘密!
絵瑠が──和久井さんが俺のもとに来てからだ、こんなことを思うようになったのは。



「……もう誰も愛さないと思ってたのにな」



独り言のように呟き、グラスの中の氷をカラカラと意味なく動かす。

そんな俺に、美波ちゃんは穏やかな声で言った。



「それは難しいですよ。だって……私達は生きてるんだから」



生きてる限り、人の心は不動ではないし、うつろいやすいものだ。

それはわかっているのだが。



「俺がもし他の人と暮らし始めたとしたら、優海はどう思うだろうな……」



当然、もう優海の気持ちを知る術はないけれど、考えずにはいられなかった。


答えの出ない問い掛けとやりきれない想いを、ウイスキーと共に飲み込む。

そんな俺を、美波ちゃんは切なげな瞳で静かに見つめていた。



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