ラブソングを君に
月日はあっという間に過ぎて、本番まであと1週間を切ってしまった。

時折先生に指導をしていただいたけれど、先生はちょっと眉を下げて言うのだ。

「声はすごく綺麗で通るけど、なにかが足りないのよね…」

「なにか、ですか…」

「そうなの…どうしてかしら」


困った顔をする先生に、私も申し訳なくなってくる。

なにか、ってなんだろう。

先生にも判らない、私自身にもわからないなにか、の存在は時間がないのと相まって、私をどんどん追い詰めた。


よい評価がもらえずくさってきたある日、いつも通り音楽室で練習していると、

ドアが無遠慮に開いた。


思わず声を失う。



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