ラブソングを君に
「…~~~♪」

観客席が静まり返ったのがわかった。


『あなたは近くて遠いひと。』

(誰よりも長く近くにいたはずなのに、)


『気づけば姿が見つからない。』

(いつもあなたの影を探していたのに、)


『あなたは私の愛しいひと。』

(気付くのが遅すぎたかな、)


『気付けばもう手が届かない』

(ねえ、音弥。)



私いま、とてつもなくあなたが愛おしいの。



ピアノの余韻が消えていく。

なのに、あるはずもないマリンバの音色は、まだ鳴り止まなかった。


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