《短編》春夏秋冬
うちは両親が共働きで、夜遅くまで帰ってこない。

おまけに最近じゃ、大学生になったお兄ちゃんも、なんだかんだと理由をつけては、帰ってこないことが増えた。



「昔はさぁ、晃と私と、私のお兄ちゃんとで、よく遊んでたのにねぇ」


だから私と晃も自然と遊ぶことがなくなったんだけど。



「よく、ふたりがうちに飯食いに来てたもんなぁ」

「懐かしいね」

「賑やかだったよな、あの頃は。持ち物まで3人で一緒にしてさ、3人兄妹みたいだって言われて」

「ほんと楽しかった」


思い出に浸りながらも、現実、今、家でひとりぼっちの自分を思う。

確かに学校では楽しいけれど、家に帰るといつも魔法が解けたように感じてしまうから。


ナツが言うように、私は実際、『寂しいやつ』なのだ。



息を吐いた私を見て、晃は、



「晴香はさ、昔と今だったら、昔の方がいい?」

「うーん。難しいけど、昔は手放しで楽しいことだけを追ってたし、無邪気でいられた。でも今はそうじゃないでしょ?」

「戻りたい?」


聞かれて驚いた。

でも、首をかしげた私を晃は真っ直ぐに見て、



「過去の思い出って輝いてるじゃん? いいことだけ覚えてるもんだし」

「うん」

「けどさ、実際は戻れないじゃん」


私が言うより先に、ばさっと切り捨てられた。



一緒に育って、ずっと同じことを考えていると思っていた晃が。

一瞬、知らない人に見えた。


私は目を伏せてしまう。
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