《短編》春夏秋冬
「何よ。晃が『戻りたい?』って聞いてきたんじゃない」

「だって、晴香、そんな顔してたから」

「……『そんな顔』?」


思わず眉根を寄せた私に、晃は答えず、



「晴香の言いたいこともわかるけどさ、俺らも高校生になったんだし、いつまでも子供みたいなこと言ってんなよなぁ」

「……『子供みたい』って……」

「ナツだって言ってたよ。『過去なんて現実から目を背けたいやつが求めるもんだ』って」


またナツの話になった。


っていうか、『現実から目を背けたい』って、何よ。

確かにその通りだから、反論のしようもないじゃない。



「今はナツの話なんかどうでもいいよ」


私は不貞腐れて言った。

晃は、そんな私の態度に肩をすくめ、



「俺、これから風呂入るから。用ないなら、また明日、学校でな」


言うなり、私の返事も聞かずに、ガラガラと窓を閉めてしまった。



何よ。

何よ、何よ、何よ。


晃の馬鹿。



昔はいつも私の話に同意してくれてたのに。

なのに、高校生になった途端、急に大人ぶったこと言って。


何だか私だけ置いてけぼりみたいじゃない。

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