《短編》春夏秋冬
要領を得ない返答だなと思う。

まぁ、ナツに聞いたっていつもこんなようなものだけど。



「でもさ、人って誰にも話したくないことがひとつやふたつあるの、普通じゃん?」

「ってことは、ナツ、やっぱり何か秘密にしてることあるんだぁ?」

「いや、一般論の話な」


またはぐらかすんだから。


私たちしかいない非常階段。

雨が降り出しそうな空模様。



「ねぇ、私っておかしいと思う?」

「何、いきなり」

「だって最近、4人でいる時間減ってるじゃん。それを嫌だと思う私はおかしいのかなぁ、って」


膝を抱える。

ナツと、肩と肩がぶつかった。



「別に、おかしくはないと思うけど」

「……『けど』?」

「気持ちはわかるけどさ、無理だろ、実際には」


自由人で、好き勝手ばっかりやってるくせに、ナツはいつも現実を見た物言いをする。

ちょっと冷めてるとも言える。



「たとえばさぁ、晴香にカレシができたとしたら、そっち優先させんじゃん? 別に晴香だけに限った話じゃないけど」

「だからぁ。私はそういうのが寂しいから嫌だって話をしてるの」

「晴香がいくら嫌だと思おうが、そういうもんなの」


私はぶうっと頬を膨らませた。

ナツの言うことは正論過ぎて、自分でもわかってるから反論のしようがない。



「まぁ、あれだよ。お前も好きなやつのひとりやふたり、見つけろっつー話だよ。したら、そういうことどうでもよくなるっしょ」

「出たよ、またその話」

「じゃなくて、マジで」
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