《短編》春夏秋冬
そして迎えた夏休み。
課題の半分以上を7月中に終わらせてしまった私は、優秀というか、暇人というか。
私もナツみたいにバイトでもしようかなぁ、と、思いながら歩いていた時だった。
「おー。晴香じゃん」
噂をすれば影が差すとはよく言ったものだ。
まさか私の地元で偶然ナツと会うなんて思いもしなかった。
「何やってんの?」
「コンビニ帰り」
袋を持ち上げた。
うだるような暑さ。
夕方なのに陽が沈む気配がない。
「アイスあんの? くれよ」
「やだよ。っていうか、そっちこそこんなところで何やってんのよ」
「さっきまで晃といたから」
「うそっ! 何で私を誘ってくれないのよー」
ちょっとショックだった。
『忙しい』とか言ってたくせに、晃とふたりだったら遊べるなんて。
「ひどーい」
「男の子には色々あるんですぅ」
「まさか、晃を変な道に引きずり込もうとしてないでしょうねぇ? ナツみたいになったらどうするのよ」
「お前マジで俺をどんな人間だと思ってんだっつーの」
いや、私はこういう話をしたいわけじゃなくて。
でもきっと、その『色々』を聞いたってナツが教えてくれるわけもない。
「つまんなーい」
「うはは。悔しがれ、悔しがれ」
陽に焼けた顔で笑うナツ。
太陽の子みたいだと思った。