《短編》春夏秋冬
「あたしたち、親友でしょ? ね、お願い、晴香。協力してよ」


みんな、勝手すぎて嫌になる。


『幼馴染』だ、『親友』だ、と言うくせに、私には恋愛相談のひとつさえしてくれなかったくせに。

なのに、ふたりして『協力して』だなんて、ありえないよ。



「晴香、聞いてる?」

「え? あ、うん」

「協力、してくれるよね?」

「あ、……うん」


でも、文句のひとつも言えないまま、私はうなづくことしかできない

電話口の向こうは、その瞬間、ぱあっと華やいで。



「よかったぁ。晴香は親友だからこそ、言えなかったんだ。でも、言ってよかった。ほんとよかった。あたし晴香のこと大好きだもん」

「………」

「ねぇ、当日は浴衣着るでしょ? 一緒に着ようよ。あたしナツに可愛いとこ見せたいけど、ひとりじゃ恥ずかしいし。ね? いいでしょ?」

「……うん」


私が浴衣なんか着てどうするのよ。

っていうか、私、浴衣なんて子供の頃にしか着たことないし。


なんて、もちろん言えるはずはなかったから。



「楽しみだね」


引き攣った顔が見られなくてよかった。



電話を切って、ベッドに倒れ込む。

4人で遊べるなら何だって楽しいと思ってたはずなのに。


なのに、こんなのなら行きたくないよ。




花火大会が終わったら、私たちの関係はどうなってしまうのだろう。

< 25 / 69 >

この作品をシェア

pagetop