《短編》春夏秋冬
「ちょっと、やめてよ」

「うはは」


のん気なナツを殴ってやりたくなった。



それから、晃が来て、美冬が来て。

4人揃うのは、何だかんだで夏休みになってから初めてだと気付いた。


だからって、私は気が重いままで。


なのに、そんなのお構いなしの3人は、心なしかわくわくしているように見えた。

『好き』って何だろうかと、私はぼんやりと考えていた。



駅から電車に乗って、河川敷近くの駅で降りて、会場まで歩く。



人だらけ。

迷子になりそうだし、暑いしで、私は帰りたくなった。


花火大会が始まる7時半まで、あと2時間。


先に、持ってきたビニールシートを敷いて場所取りだけした私たちは、時間潰しがてら、屋台を巡ることにした。

食欲のまったく湧かない私とは対照的に、3人はめちゃくちゃ元気だった。



「あたしちょっとトイレ」


「俺もー」と言いながら、美冬に続く晃。

こうやって見るとわかりやすいのに、どうして私は今まで気付かなかったのだろうかと思った。


ため息がこぼれる。



「どした? 人混みで酔ったか?」

「え? あ、うん」


ナツに顔を覗きこまれてはっとする。

そういえばこの人、“美冬の好きな人”なんだっけ。


でも、美冬の想いが成就したら、必然的に晃は失恋するわけで。



「こっち」


ぼうっとしているうちに、ナツに手を引かれていた。

ナツは私を、人の少ない木陰まで連れて行ってくれた。


繋いだナツの手は、驚くほど熱くて。
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