《短編》春夏秋冬
「飲み物買ってきてやろうか?」

「いらない」


私はナツの手を振りほどいた。


浮かれ気分で往来する人たちを見る。

親子連れより目立つ、カップルの群れ。



「ねぇ、ナツ」

「うん?」

「ナツって好きな人いるの?」

「何、いきなり」

「いるのかいないのか聞いてるの」

「どっちだと思う?」

「はぐらかさないでよ。私は真剣に聞いてるの」


それでも、ナツは誤魔化すように曖昧に笑う。

私には本心を見せようという気はないのだろうか。


睨む私に、ナツから笑顔が消えた。



と、その時。



「お待たせー」

「お前ら、どこに消えたのかと思ったら」


美冬と晃がやってきた。



「って、何、この険悪な空気は」


晃は私とナツを交互に見る。

美冬は無言のままだけど、私を睨んでいるような気がして。


なのに、ナツは晃にも美冬にも目もくれない。



「もう、マジめんどいわ」


舌打ち混じりに吐き捨てたナツは、



「なぁ、晴香。何でわかんねぇんだよ。俺が好きなのはお前しかいねぇだろ」
< 28 / 69 >

この作品をシェア

pagetop