《短編》春夏秋冬
聞き間違いなのかと思った。

いや、そうであってほしかったのに、



「いい加減、気付けよ」

「……何、言って……」


美冬の顔が見られない。

冗談にもならない。



「最初からずっと、俺は晴香のことが好きだったの。なのに、さんざん無視した挙句、『好きな人いないの?』って、俺もさすがに傷つくだろ」


足を引く。

私はそのまま、逃げるようにその場を離れた。



「おい、晴香!」


追ってきたのは晃だった。

腕を掴まれるが、私はそれを振り払う。


早足で歩く私を、それでも晃は追ってきて。



「ちょっと止まれって! 晴香!」


また腕を掴まれた。

涙がこぼれた。



「何よ!」

「怒るなって。しかも何で泣いてんだよ。これじゃあ、俺が泣かせてるみたいだろ」

「離してよ!」

「離すから泣き止んで俺の話を聞け」


ゆっくりと、晃は私を掴む手を離してくれた。

私は顔が上げられなかった。



「何で追い掛けてくるのよ」

「ひとりで帰らせるわけにはいかないだろ。それとも、ナツが追い掛けてきた方がよかったか?」

「晃は美冬のことが好きなんでしょ!」

「だから余計、俺はあの場にはいられないの」
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