《短編》春夏秋冬
「え?」


晃は困ったような顔。



「さっきのでわかった。顔見りゃわかるっつーか? やっぱり美冬はナツのことが好きなんだぁ、って」

「………」

「俺は、それでも美冬にコクろうっていう勇気はないしさ。それにどうせ、晴香とは帰るところも一緒だし? つまりは晴香をダシにして逃げたんだよ、俺もあの場から」


今頃、美冬とナツは一緒なのだろうか。

美冬は、ナツは、どうするのだろうか。



「私、知らなかった」

「うん?」

「晃が美冬を好きなのも、美冬がナツを好きなのも、ナツが私を好きなのも。何も、わかんなかった」


晃はまた困ったような顔。

歩き出す晃と一緒に歩く私。



「ナツと俺が仲よくなったのは、俺が晴香の幼馴染だったからだよ」

「……え?」

「入学してすぐ、席が近かったナツに『あの子可愛いよな』って話掛けられて。それ、晴香のことな。だから『俺あいつと幼馴染だよ』って言ったの」

「………」

「したら、『俺らは今日から親友だ』って言われて。おもしろいやつだなぁ、と思ったから、俺もそれでいいやって感じで」


『それでいいや』って、何よ。



「んで、晴香は美冬と仲よくなったじゃん? 俺は入学した時から美冬のこといいなぁ、とか思ってたから、好都合っつーか」


晃が私といた理由は、ナツのためであり、美冬のためってこと?

幼馴染だからと思っていたのは、私だけだったんだ。



『お前が固執してる友情ってもんは、はっきり言うけど、すげぇ脆いもんだぞ』

『それをお前だけが壊れないように必死に守る意味ってあるか?』


私たちの間には、最初から、友情なんてものはなかったんだと、今更気付いて。
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