《短編》春夏秋冬
私は馬鹿なのかもしれない。

壊れるも何も、最初からないものを守ろうとしていただなんて。


晃は気まずそうに私の顔を見て、



「こういう言い方は悪いのかもしれないけどさ。晴香はナツと付き合ってくれないかなぁ、って」

「……え?」

「それでナツは幸せだし。美冬は失恋するけど、俺がそれを支えればいい感じになるかもじゃん」


そんなことのために、私が、ナツと?



「馬鹿じゃないの」


晃がこんなことを言う人だとは思わなかった。

昔の晃はこんなんじゃなかったのに。



「今の晃、嫌い」

「は?」

「私は昔の晃が好きだった」


そうだ、私は昔からずっと、晃のことが好きだったんだ。


晃とずっと一緒にいられるならそれでよかった。

晃が晃のままなら、他に何もいらなかったのに。



「私、晃のこと好きだから、そんな話は聞きたくない」


なのに、晃は呆れたようにため息を混じらせ、



「お前なぁ。子供じゃないんだから」

「本気だもん!」

「だからぁ、晴香のそれは、幼馴染を取られたくないっていうだけだろ。そういうのは恋愛って言わないの」


晃は私の言葉を、私たちの今までを、全否定する。

悲しくて、何も言えなくなった。



「もういい」


また涙が込み上げてきて。

私は逃げるようにきびすを返す。


ドーン、と、背中越しに、見ることのできなかった花火が上がった。

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