《短編》春夏秋冬
美冬とは、あれから連絡を取っていない。
晃とも、顔を合わせることはなくなった。
花火大会から5日経ったその日、ナツから電話で呼び出された。
「お前さぁ、呼び出されたからって普通、ほんとにひとりで夜の公園に来るやつがあるかよ。襲われたらどうすんだ」
「あんた私を襲う気なの?」
「いや、俺のことじゃなくて」
ナツは呆れながら、自分が座っているベンチの横をぽんぽんとする。
私はひとり分の間を空けて、そこに座った。
「飲む?」
ナツはペットボトルを差し出してきた。
「何? 炭酸系?」
「惚れ薬が入ってる系」
「じゃあ、いらない」
「って、おい」
わざとらしく笑うナツ。
でも私は上手く笑えなかった。
ナツなりに気を遣ってくれているのだろうとはわかっていても、愛想のひとつもしない私はひどいのかもしれない。
ナツは肩をすくめ、
「俺のこと、嫌い?」
「……嫌いとかじゃない、けど」
「けど、好きなのは晃だ、って?」
驚いて顔を向けた。
だけど、ナツは飄々としていた。
「気付いてるっつーの。晴香が晃を好きなのも、晃が美冬を好きなのも、美冬が俺を好きなのも」
やっぱりナツはお見通しだったのか。
嫌になるよ、まったく。