《短編》春夏秋冬
「しっかし、もうすぐ文化祭じゃん? 準備のために居残りさせられるとか、ほんとだるーい」


あぁ、そういえば、美冬と晃は文化祭実行委員なんだっけ。

と、今更思い出した。


ふたりは気まずくならないのだろうか、と。



「だるいけど、あんた、狙ってる村上くんと仲よくなれるチャンスじゃん」

「えー?」

「多いらしいよ、文化祭でくっつくカップル。実行委員同士とか、特に。いつも遅くまで一緒にいるうちに恋心が芽生えて、みたいな」


そうなのか。

と、友人たちの話を聞きながら、遅れて心の中で納得した。


美冬と晃がどうにかなったところで、もう振られている私がどうこう言えることでもないから。


私は今も晃が好きなのだろうか。

わからなくて、悲しくなった。



「晴香もカレシ作りなよ」

「えっ」

「他のクラスとか、先輩とか、男いっぱいいんじゃん。別に他高生でもいいしさ。ほら、文化祭とか出会いのチャンスっしょ」

「………」

「クラスでは居づらいかもだけど、カレシできたらそんなこと思わなくなるもんだよ。それどころじゃないっていうか」


この手の話題はまだ傷口に沁みる。

だから私は曖昧にしか笑えない。


今の私は、毎日を過ごすことだけで精一杯なんだ。



「カレシがいる人の言うことは違うねぇ」

「まぁ、社会人だけどね、うちのカレシは。時間も価値観も合わなくて喧嘩ばっか。だからもう別れるかもだけど」


社会人といえば、ナツもそうだ。

私も学校辞めようかなぁ、なんて、くだらないことを考えてしまった。


もう疲れたよ。

< 37 / 69 >

この作品をシェア

pagetop