《短編》春夏秋冬
文化祭は無事に終わった。
社会人のカレシを持つ友人は破局したらしい。
美冬と晃が付き合い始めたらしいという噂を聞いたのは、それと同じくらいの頃だった。
その週の日曜日の夕方、私が買い物から帰宅して、家の前まできた時、
「駅まで送るよ」
「いいよ。帰りに寄りたいところあるし」
誰かの話し声に自然と足が止まる。
よく見ると、晃の家から出てきたらしい、晃と美冬だった。
私は、何の後ろめたさがあるわけでもないのに、思わず曲がり角に身を隠してしまう。
「ほんとに大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
「そっか。じゃあ、気をつけてな」
「うん」
そのまま、ふたりの影が重なった。
キス、してる。
ずきりと胸が痛くなる。
もう関係のないこととはいえ、見て喜べるものじゃないから。
目線を移し、ぼうっと空を見上げていたら、
「何見てんのよ」
声に、弾かれたように顔を向けた私は、驚きのあまり、「わっ!」と大きな声が出た。
いつの間にか、私のすぐ目の前にいた美冬。
晃はもう家に入ってしまったらしい。
美冬と話すのは本当に久しぶりで、気まずすぎて、私は思わず足を引く。
「あ、えっと。邪魔しちゃ悪いかと思って」
「そうだね。また晴香に取られても嫌だしね」
ストレートな攻撃に、目眩がした。