《短編》春夏秋冬
「避けてなんか……」


ない、とも言い切れない。


わざと登校時間をずらしたり、目が合っても逸らしたりしていたのは私だ。

けど、でも、晃だって私を避けてたはずだ。



「まぁ、いいけどさ。俺、今、美冬と付き合ってるから、晴香といて変な誤解されても困るし」


わざと話題にしなかったのに、晃はいとも簡単にそのことを口にした。

っていうか、私といたら『困る』のか。



「よかったね」


私はそうとしか言えない。

さっき、美冬から聞いたことなんて、晃には言えるはずもないから。


ずっと好きだった美冬と、どんな形であれ、念願叶って付き合えた晃には、絶対に。



「まぁ、晴香にこんなこと言っていいのかわかんないけど、俺、幸せなんだよ、今」

「………」

「だから、晴香も変な気の迷いなんか捨てて、カレシ作れよ。俺、応援してやるからさ」


無神経で、身勝手で。

美冬といい、晃といい、私が信じていた人の、これが実像なのだろう。


馬鹿馬鹿しくて、今更涙も流れやしない。



「お幸せに」


それが、私が言えた精一杯だった。


私は晃を振り払って家へと向かう。

晃は「おい!」と言い、慌てたように追い掛けてきたが、私はそのまま逃げるように家に入った。



美冬に張られた頬よりずっと、心が痛くて、辛かった。

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