《短編》春夏秋冬
「学校は?」

「あー……」


あんまり行ってない、なんてことは、余計言えない。

ナツはため息を吐き出した。



「何かあったか?」

「え?」

「晴香が学校に行かないなんて、あれから何かあったとしか思えねぇだろ」

「………」

「晃や美冬と、何かあったのかなぁ、って」


また、射抜くような目でナツは私を見る。



「晃は何も言ってなかったけど」

「晃と会ったの?」

「たまに連絡は取ってるよ。俺もばたばたしてたから会ってはねぇけど」


晃と美冬、付き合ってるんだよ。

と、言いかけたけど、やめといた。


だからどうしたと言われればそれまでだし、何よりもう学校にいないナツに心配させるようなことは言えない。



その時、ナツの携帯が鳴り、ディスプレイを確認したナツは「ちょっとごめん」と私に背を向け、通話ボタンを押す。



「おー、何? あぁ、わかってるよ。明日はそっち行くわ。はぁ? 別に浮気とかじゃなくて、先輩らと飯食ってただけだろ。いちいちそんな心配すんなよ。じゃあな」


ナツは電話を切り、「悪ぃ」と私に言った。

何が『悪ぃ』なのか、私にはよくわからなかった。



「カノジョ、いるんだ?」

「あぁ、まぁ、少し前からな」


ナツを振った私が、それをとやかく言えるはずもない。

ナツが幸せなら、私は祝福してあげなきゃいけない。



「おめでとう」


垂れ流すように言った。
< 43 / 69 >

この作品をシェア

pagetop