《短編》春夏秋冬
10月も終わりを迎える頃には、すっかり肌寒さが増して、秋が深まったように思う。
寂しさから遊び歩いていた私も、最近じゃ、学校以外の時はほとんど家にいるようになった。
そんな頃。
「わっ、お兄ちゃん?!」
めっきり見掛けることのなくなったお兄ちゃんが、珍しく帰ってきた。
「何? 何かあったの?」
「金ねぇから家飲みしようと思って」
お兄ちゃんが言った瞬間、玄関のドアが開いて、お兄ちゃんの友達らしき男の人がふたり入ってきて。
「ちゃーす」
「酒買って来たぞ、酒」
「つーか、『誰もいない』って言ってたのに、その子は誰だよ」
「あ、噂の妹じゃね?! 可愛いじゃん。よっしくー」
その勢いに押されてしまう。
お兄ちゃんは面倒くさそうに小さく舌打ちした。
「俺の部屋、二階の右奥だから。さっさと行けよ」
「は? 妹は?」
「晴香は関係ねぇべや」
「晴香ちゃんっていうの? ついでだから俺らと飲もうぜ。な、いいだろ、正晴」
「何でだよ。死ね」
「つまんねぇこと言うなやぁ。ほら、おいでよ、晴香ちゃん」
茶髪の人に手を引かれた。
お兄ちゃんはあからさまに怒った顔になっていた。
が、それ以上は何も言ってはくれなかったし、どうせ私も暇だしで、手を引かれたままお兄ちゃんの部屋に入った。
昔はよく一緒だったお兄ちゃんに、またこうして遊んでもらえる。
と、私は少し嬉しくなっていたのかもしれない。