《短編》春夏秋冬
飲み始めてから3時間以上が経った。
さすがにみんな酔っ払いだ。
お兄ちゃんの友達ふたりは、エッチな話に花を咲かせていた。
「したらさぁ、その女、『正晴くんは?』とか言うし? 正晴狙いで俺に近付くとかありえなくね?」
「例の短大生だろ? 正晴がそれからすぐにヤリ捨てたとかいう」
「そう、それ!」
「しつこいよ、お前。それ聞くの5回目だよ。酔ったら毎回じゃん。なぁ、正晴」
この3時間以上で、お兄ちゃんがどれだけ女の人に対してひどいのかということが、よーくわかった。
とはいえ、こうやって悪口を言い合いながらも仲よくできるなんて、男の人はすごいと思う。
脳裏をよぎった美冬とのことを振り払った。
「晴香ちゃんは正晴みたいな男には引っかかっちゃダメだよー?」
「……お兄ちゃんみたいな?」
「ろくでなしが服着て歩いてるような男だよ。晴香ちゃんはほわーんとしてるから、すぐこういうやつの餌食になるから気をつけなよ?」
「………」
「ほんと、勉強しに行ってんだか、女漁りに行ってんだか、わかりゃしねぇもんな、正晴は」
お兄ちゃんの大学生活って一体どんなものなんだろうか。
遊んでても誰も文句を言わなくて。
ナツは家族のために自分を犠牲にしたのに、なのに、どうして――。
「晴香ちゃん、眠い? 目がとろーんとしてるけど」
「え? あ、えっと……」
時計を見ると深夜1時だった。
「晴香。もう自分の部屋に戻って寝ろよ。いい加減、邪魔なんだよ」
「おいおい、正晴。その言い方はないだろ」
「はぁ? お前に関係ねぇだろ。俺が妹にどう言おうと、それはうちの問題だ」
「ひっでぇなぁ。こんな可愛い妹に向かって、ありえねぇ」