《短編》春夏秋冬
私の隣の席のナツは、授業のほとんどの時間、机に突っ伏して寝ている。
自由人っていうか、好き勝手っていうか。
それにしても陽を浴びた茶色の髪が猫みたいだなぁ、とか、ほんと顔だけはいいよなぁ、とか、どうでもいいことを考えちゃったりもして。
「晴香」
呼ばれて驚いた。
寝ていたはずのナツが目を開けたから。
「びっくりしたー。何? どしたの?」
「横からの視線がすごくてねぇ。そんなに俺を見つめてどうすんの」
「別に見つめてないけど。あ、でも、気持ちよさそうな寝顔だなぁ、とは思ってた」
「そうですか」
むくっと体を起こすナツ。
寝惚けまなこで、ちょっと笑える。
「寝すぎじゃない? またいつもみたいにオール?」
「んー」
「何してたの? 夜遊び? 火遊び?」
「いや、火遊びはダメだろ」
「じゃなくてさぁ。女の子たちとでも遊んでたのかなぁ、って」
「『たち』って何だよ。俺どんなイメージだよ」
「違うの?」
「気になる?」
逆に聞き返された。
ナツははぐらかすのが上手い。
っていうか、時々、謎の部分がある。
いつもは私たちとばかり一緒にいるナツだけど、何気にモテるの知ってるし、影ではカノジョとかいたりしそうな感じ。
「気になるっていえば気になるけど」
「マジか」
「カノジョいるくせに隠してそうなところとか、すごい気になるんだよ」