《短編》春夏秋冬


私の隣の席のナツは、授業のほとんどの時間、机に突っ伏して寝ている。

自由人っていうか、好き勝手っていうか。


それにしても陽を浴びた茶色の髪が猫みたいだなぁ、とか、ほんと顔だけはいいよなぁ、とか、どうでもいいことを考えちゃったりもして。



「晴香」


呼ばれて驚いた。

寝ていたはずのナツが目を開けたから。



「びっくりしたー。何? どしたの?」

「横からの視線がすごくてねぇ。そんなに俺を見つめてどうすんの」

「別に見つめてないけど。あ、でも、気持ちよさそうな寝顔だなぁ、とは思ってた」

「そうですか」


むくっと体を起こすナツ。

寝惚けまなこで、ちょっと笑える。



「寝すぎじゃない? またいつもみたいにオール?」

「んー」

「何してたの? 夜遊び? 火遊び?」

「いや、火遊びはダメだろ」

「じゃなくてさぁ。女の子たちとでも遊んでたのかなぁ、って」

「『たち』って何だよ。俺どんなイメージだよ」

「違うの?」

「気になる?」


逆に聞き返された。



ナツははぐらかすのが上手い。

っていうか、時々、謎の部分がある。


いつもは私たちとばかり一緒にいるナツだけど、何気にモテるの知ってるし、影ではカノジョとかいたりしそうな感じ。



「気になるっていえば気になるけど」

「マジか」

「カノジョいるくせに隠してそうなところとか、すごい気になるんだよ」
< 5 / 69 >

この作品をシェア

pagetop