《短編》春夏秋冬
バンッ、と大きな音を立てて、開いた扉。

ひどく驚いた顔をするお兄ちゃんと、対照的に、目を見開く茶髪の人。



「雄二! てめぇ、人の妹に何やってんだよ!」

「待てよ、正晴! 冗談だよ、冗談!」

「うるせぇよ! 殺すぞ!」


茶髪の人は慌てて私から離れた。



「ほんと、ただの出来心なんだよ! な? わかるだろ? まだ何もしてないし?」


言い訳めいたことを言いながら、茶髪の人は逃げるようにうちを出て行った。

お兄ちゃんが睨むので、もうひとりの人も寝癖のまま、茶髪の人の後を追うようにして出て行く。


でも、私の震えは止まらなかった。



「だからお前のこと呼びたくなかったのに」

「………」

「まぁ、あいつらはもう二度とこの家には来させないし。つーか、今度会ったらマジぶっ殺しとくし」


私は掛け布団の端を握り締めて顔を覆う。



「とりあえず、悪かったよ。な? だからもう、寝ろよ、お前。したら、忘れるから」


お兄ちゃんの友達に変なことされかけて、その上、それをお兄ちゃんに見られて、忘れられるはずなんてない。



「最低だよ、お兄ちゃん! 大っ嫌い! 出てってよ!」


枕を投げつけた。

お兄ちゃんは一言、気まずそうに「ごめんな」と言って、扉を締めた。



私は布団に顔をうずめたまま、声を殺して泣いた。


幼馴染も、親友も、私を好きだと言った人も、お兄ちゃんも。

みんなみんな、私を苦しめるばかりで。



本当にもう、私には誰もいなくなった。

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