《短編》春夏秋冬
冬
辞めたいなぁ、学校。
でも辞めてどうすればいいんだろうなぁ。
けど、それでも辞めたいなぁ。
なんて、最近の私は、そればかりだ。
あれから、同じ家にいても、お兄ちゃんと話すことはなくなった。
隣の家の幼馴染とも、かつては親友だと思っていた子とも、目も合わせない。
ナツからは、一度だけ長い着信があったけれど、出ないままでいたら、それっきり。
私が16年のうちで築き上げてきたものはなんて希薄なのだろう。
「さっむーい」
友人は私の横でばたばたと暴れている。
「あたしほんと冬嫌い! 一生あったかいのがいい! ハワイ行きたーい!」
「行ったことあんのかよ」
「ないから行きたいんじゃーん! そしてそのままハワイ国の人になりたーい!」
「こいつ馬鹿だ」
吐き出した息が白くなる。
もうすっかり冬らしい。
なのにどうして、私の時間はまだ、あの花火大会の日で止まったままなのか。
「ねぇ、晴香もそう思うっしょ?」
「え? あぁ、そうだね」
「だよね! あたしと一緒にハワイ国の人になりたいよね?」
『ハワイ国』って何だろう。
と、考えながら、また、学校辞めたいな、と思った。
夏はどこに行ってしまったのだろう。