《短編》春夏秋冬
「ほら、もうすぐ冬休みだし? これはもう、ハワイに行けっていう神のおぼしめしじゃんね」

「あんた寒さで頭やられちゃったんじゃない?」

「うるさいなぁ。あたしは冬休みにハワイに行くの! カレシと一緒に!」

「それは金貯めて、カレシ作ってから言う台詞でしょうが」

「うっわー。夢も見させてくれないなんて」

「あんた夢見すぎだから」


そうか、冬休みか。

目先の期末テストのことばかり考えていて、すっかり忘れてた。


まぁ、だからって、私には夢見るような何かもないのだけれど。



「だってさぁ、冬休みってイベントづくめじゃん。クリスマスに、年越しに、初詣?」


美冬と晃は全部一緒に過ごすのだろうか。

ナツは、例のカノジョとだろうけど。


このままじゃ、羨ましさが嫉妬に変わってしまいそうだ。



「まぁ、あたしらには無縁の話だよ」

「やめてよ、そういうのー」

「いいじゃん、いいじゃん。寂しい女3人。みんなで、クリスマスも、年越しも、初詣も、一緒に過ごせばいいじゃん?」

「ありえなーい」


『みんなで』か。

私はあの頃、ただそれだけを望んでいたはずだったのに。


話ながら歩いていた刹那、ドンッ、と誰かにぶつかった。



「あ、ごめん」


と、顔を上げて驚いた。

晃だった。


私たちを見た友人たちは、顔を見合わせ、少し気まずそうになった。



晃は困ったような笑みを浮かべた後、ぐるりと辺りを見回して、



「なぁ、晴香。ちょっと話せる?」

< 52 / 69 >

この作品をシェア

pagetop