《短編》春夏秋冬
吐露するように、晃は言う。

そして懺悔するようにこうべを垂らした。



「ほんとにごめん、晴香」


私も泣いた。

ふたりで泣き続けた。


私たちはきっともう、二度とこんな馬鹿げたことは考えないだろう。


ナツからの着信は、不在画面に切り替わった。

冷たい風は、今も吹き続けている。



「私、どうして晃なんか好きだったんだろうね」

「……『なんか』って」

「だってさ、晃って友達としては最高だけど、男としては最低じゃん」


晃は充血した目を伏せ、



「そうかもね」


と、だけ返す。

泣いた後、ふたりで笑った。



「電話、しなくていいの? ナツに」

「いいよ。どうせ漫画返せって言われるだけだし。コーヒーこぼしたからどうしようかと思ってたんだけど。晴香から言っといてよ」

「何で私なのよ」

「だって俺、ナツと話すより先に、美冬と話さなきゃだもん」

「別れるの?」

「別れたくないから話すんだよ。もうあんなやつのことなんか忘れて俺のことちゃんと見ろよー、ってな」

「へぇ。かっこいいねぇ」

「うわっ、それ馬鹿にしてるみたいに聞こえるんですけど」


また笑った。

笑いまくったら、色々とどうでもよくなってきた。


私はもう、晃のことでも美冬のことでも、これから悩むことはないと思う。

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