《短編》春夏秋冬


冬休みになった。



晃とは、たまに顔を合わせた時だけ、普通に挨拶くらいはするようになった。

晃の家から出てきた美冬とたまたま会った時、一言「ごめん」と言われたことには驚いたけれど、でもその後に「ブス」と言われてムカついた。


だけど、何かもう、それでいいと思った。


晃と美冬は、きっとちゃんと、自分たちの形を手にしたのだろうから。

私は、今度こそそれを、心の中で祝福してあげられたから。



ひどく穏やかな気持ちで、迫り来る年の瀬を迎えようとしていたのに。



なのに、いつも変化は突然で。

私に断りもなく、いきなりやってきたそれに、抗う術もなくて。



「晴香!」


夜、お兄ちゃんはどたばたと帰ってきた。


うるさいなぁ、とか、話し掛けないでよ、とか。

私はいつも通りに無視しようとしていたのに、



「大変だ! 父さん、事故ったらしい!」

「……え?」



お父さんが、事故?



「何かわかんねぇけど、母さんがパニクって電話してきて! 中央病院に運ばれたとか言ってて!」

「………」

「とにかく行くぞ!」


有無を言わさず私の手を引くお兄ちゃん。


触らないで。

なんて、言ってる場合じゃなかった。



私は恐怖で身震いしたままで。

< 56 / 69 >

この作品をシェア

pagetop