《短編》春夏秋冬
冬休みになった。
晃とは、たまに顔を合わせた時だけ、普通に挨拶くらいはするようになった。
晃の家から出てきた美冬とたまたま会った時、一言「ごめん」と言われたことには驚いたけれど、でもその後に「ブス」と言われてムカついた。
だけど、何かもう、それでいいと思った。
晃と美冬は、きっとちゃんと、自分たちの形を手にしたのだろうから。
私は、今度こそそれを、心の中で祝福してあげられたから。
ひどく穏やかな気持ちで、迫り来る年の瀬を迎えようとしていたのに。
なのに、いつも変化は突然で。
私に断りもなく、いきなりやってきたそれに、抗う術もなくて。
「晴香!」
夜、お兄ちゃんはどたばたと帰ってきた。
うるさいなぁ、とか、話し掛けないでよ、とか。
私はいつも通りに無視しようとしていたのに、
「大変だ! 父さん、事故ったらしい!」
「……え?」
お父さんが、事故?
「何かわかんねぇけど、母さんがパニクって電話してきて! 中央病院に運ばれたとか言ってて!」
「………」
「とにかく行くぞ!」
有無を言わさず私の手を引くお兄ちゃん。
触らないで。
なんて、言ってる場合じゃなかった。
私は恐怖で身震いしたままで。