《短編》春夏秋冬
カーテンの隙間から漏れてくる陽の光に、私は寝苦しくて目を開けた。
「んー……」
と、寝返りを打って、目に入ったその光景に驚いた。
私はがばっと飛び起きて、
「な、ななな、何で?!」
さっきまでナツがいたはずの場所には、なぜかお兄ちゃんがいて。
っていうか、あれ?
何で私は寝てたんだろう。
「やっと起きたか。お前、寝顔やばいくらいブサイクだったぞ」
「ななななな」
「いや、とにかく元気なら何よりだ」
お兄ちゃんは、ふぅ、と煙草の煙を吐き出した。
人の部屋で吸わないでほしい。
臭いのに。
眠そうな顔のお兄ちゃんは、朝の光に目を細めながら、
「さっき俺が帰ってきたら、変な男がいて。『誰?』って聞いたら『どうも』とか言うんだよ、そいつ」
「は?」
「オバケかと思ったら足あるし。だから『妹に何かした?』って聞いたら、『俺も妹がいるんでオニーサンの心配はよくわかります』とか言うし?」
「………」
「答えになってねぇしさぁ。わけわかんねぇやつだな。あれ、晴香のカレシか?」
ナツのことに違いない。
と、いうことは、ナツはさっきまでずっと私の傍にいてくれたということ?
私は多分、明け方くらいには寝たはずなのに。
「とにかくそいつが言うんだよ。『晴香はあんまり自分の気持ちとか言うやつじゃないけど、ほんとは色々抱えてるんですよ』って」
「………」
「てめぇに言われたくねぇよって感じだけど、よく考えたら俺も、自分のことしか考えなかったしなぁ、みたいな」