《短編》春夏秋冬


カーテンの隙間から漏れてくる陽の光に、私は寝苦しくて目を開けた。



「んー……」


と、寝返りを打って、目に入ったその光景に驚いた。

私はがばっと飛び起きて、



「な、ななな、何で?!」


さっきまでナツがいたはずの場所には、なぜかお兄ちゃんがいて。


っていうか、あれ?

何で私は寝てたんだろう。



「やっと起きたか。お前、寝顔やばいくらいブサイクだったぞ」

「ななななな」

「いや、とにかく元気なら何よりだ」


お兄ちゃんは、ふぅ、と煙草の煙を吐き出した。


人の部屋で吸わないでほしい。

臭いのに。



眠そうな顔のお兄ちゃんは、朝の光に目を細めながら、



「さっき俺が帰ってきたら、変な男がいて。『誰?』って聞いたら『どうも』とか言うんだよ、そいつ」

「は?」

「オバケかと思ったら足あるし。だから『妹に何かした?』って聞いたら、『俺も妹がいるんでオニーサンの心配はよくわかります』とか言うし?」

「………」

「答えになってねぇしさぁ。わけわかんねぇやつだな。あれ、晴香のカレシか?」


ナツのことに違いない。

と、いうことは、ナツはさっきまでずっと私の傍にいてくれたということ?


私は多分、明け方くらいには寝たはずなのに。



「とにかくそいつが言うんだよ。『晴香はあんまり自分の気持ちとか言うやつじゃないけど、ほんとは色々抱えてるんですよ』って」

「………」

「てめぇに言われたくねぇよって感じだけど、よく考えたら俺も、自分のことしか考えなかったしなぁ、みたいな」
< 64 / 69 >

この作品をシェア

pagetop