《短編》春夏秋冬
一階に降りて、コーヒーを淹れながらナツに電話をかけた。
「おー。起きた?」
「うん。さっきお兄ちゃんがナツと会ったって教えてくれて」
「あぁ」
「ずっとついててくれたんだね」
「何かうなされてたし、帰るに帰れなかったんだけど。オニーサンが帰ってきたし、もう大丈夫かなぁ、って」
電話口の向こうはがやがやしていた。
声が聞き取りづらい。
「今、何やってるの?」
「晴香んちの近所で朝マック中。マフィンの不味さにびびったよ」
笑ってしまった。
私が笑ったら、ナツも笑う。
「私ね、寝たらちょっと頭がすっきりしたの。少しは落ち着いたっていうか」
「そっか」
「これからまたお父さんのところに行こうと思ってる。色々話したいことあるし、話さなきゃいけないと思うから」
「まぁ、よくわかんねぇけど頑張れや」
「うん」
「あ、でも、頑張りすぎんなよ? 何かあったらいつでも電話してこい。愚痴くらいならいくらでも聞いてやるからさ」
「ありがとう」
と、その時。
バンッ、とドアが開いた。
「なっ!」
そこには、血相を変えた晃が立っていて。
「晴香!」
「きゃっ!」
その勢いに驚き、手に持っていた携帯が床に転げて。
晃は私の肩を掴んで揺する。