《短編》春夏秋冬
「だだだ、大丈夫なのか?! おじさん、事故ったって聞いて!」

「え?」

「さっきそこで正晴くんに聞いたんだよ! 何で俺に言わなかったんだよ! 心配しただろ!」


晃は泣きそうだった。



「あ、晃。ちょっと待って。とりあえず落ち着いて」


晃ははっとしたように手を離し、「ごめん」と焦ったように言う。

何だかんだ言ったって、幼馴染なのだなぁ、と思った。



「昨日は確かにパニックになったけど、もう大丈夫だよ。私も、お父さんも」

「あ、そうなんだ。よかった」

「ありがとう。でも、頼むからチャイム鳴らして入ってきてね」

「いや、だって、そんな場合じゃないと思ったから、つい」


私は笑いながら、落ちた携帯を拾い上げた。

なのに、それの画面は真っ黒になってしまっていた。



「やばーい。さっきので壊れたかも、これ」

「マジか」

「あ、違う。電源落ちてただけだったみたい。ほら、見て。よかったぁ」


なんて、のん気に談笑していた時。

再び、バンッ、とドアが開く。



「晴香?! ……って、あれ?」


ナツは目を見開いたまま、息を切らして立ち尽くす。



「何でナツがいるんだよ?」

「いや、こっちの台詞だよ。晴香と電話してたらいきなり晃の声がして、そのすぐ後に『きゃっ!』だぞ? かけ直しても電話通じなくなってるし。何事かと思うだろ」

「だから来たのか?」


言うなり、晃はにやりと笑う。

そして私とナツを交互に見て、



「なるほど」
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