《短編》春夏秋冬
晃は笑いを堪えた顔。



「どうやら俺は、すごーく邪魔みたいだから、帰るよ。どうせ“ただの隣に住んでる幼馴染”だし」

「は?」

「いや、いいんだ。邪魔して悪かったな」


にやにやしながら出て行く晃。

ちょっと気持ち悪いと思った。


ナツはこめかみを押さえてため息を吐き出し、



「何が『なるほど』だよ。ムカつく。こっちはめちゃめちゃ焦ったってのに。ほんと『邪魔』だっつーの」

「………」

「つーか、漫画返せってのに。何ヶ月も前から言ってんのにさぁ」


あぁ、晃がコーヒーこぼしたやつか。

なんてことは、私からは言わないでおく。


ナツはまだぐちぐちと言っていたが、



「ねぇ、ナツ」

「うん?」

「ありがとう、来てくれて。でも、チャイムは鳴らしてほしい」

「いや、だから俺は」

「で、今度はゆっくりお茶でも飲んでってよ」

「……え?」

「お茶飲みながら、聞かせてほしいの。ナツの苦しみ。私が聞いてあげるから。そしたら半分になるんでしょ?」


笑う私。

ナツは目を丸くして、



「晴香……」


抱き締められた。

苦しかったけど、それ以上に嬉しかった。
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