不誠実な恋
「ごめんな・・・ごめん」


何度目になるだろうか。こんなにも苦しそうな、泣き出しそうな謝罪の言葉を聞くのは。
とても弱く、繊細過ぎる程の心を持ったこの人の、こんなにも辛そうな、壊れそうな顔を見るのは。

「責めたつもりはなかったんやけど…まぁ、えっか」

三十路に入り、漸く「思った事の全てが直ぐに口に出しても良いものでは限らない」と学習した。

それはそれで重要なことなのだけれど、やはり自分でも遅すぎるのではないだろうか、とは思う。
自覚しているだけに、侑士には大変申し訳なく思う。

「ごめん、美雨」
「いやいや。独り言のつもりやったから」
「許して・・・ごめん」

恋愛沙汰では、たとえどんなに複雑なものになろうとも掠り傷の一つも付かないのが侑士。
けれど、そんな侑士の心におそらく一生癒えないほどの深くて大きな傷を付けてしまった。
それが優越感になることもあれば、その逆もあるわけで。

お互いに同じ様に思っているからこそ、言うべき言葉ではないはずなのに。

どうしてだろう。
今になって口が滑ってしまったのは。

責めるつもりもなければ、許さないつもりも無い。それなのに・・・

「もうええやん。気にせんとき?」
「ごめん・・・」

こうなってしまった侑士は、たとえあたしがどんな慰めの言葉を掛けようとも絶対に耳を貸さない。
聞き入れないと言うよりも、言葉でさえただの音に聞こえているような、そんな拒絶の仕方。
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