不誠実な恋

「納得いかんって顔しとるなぁ」
「だって、よくわからないから」
「まぁ、感性の問題やわな、要は」
「感性…ですか」
「俺はそう捉えたけど、君には純粋な恋愛小説かもしれへん。大人の恋は難しいからな」

見知らぬ男の人に突然声を掛けられ、感性を語られるとは思ってもみなかった。

始まりはいつも突然。
だからこそ、それに惹かれる自分がいるのは否めない。

「もしかして…惚れた?」
「はぁっ!?」
「いや、どないしよかなぁって顔しとったから」
「別に」
「素直やないなぁ。まぁ、若いうちはそれも可愛いけどな」

まただ。仕掛けられるこの直球勝負は、どうかわせば良いものだろうか。
このまま流されるべきだろうか。それとも抵抗するべきだろうか。

恋愛下手ではないけれど、クールに振舞えるほど大人でもない。恋に恋焦がれて、夢見る女子高生なのだから。

童話の中にも恋愛小説の中にも、愛されるヒロインは存在する。
そして、同じ様に愛してくれる王子様も。

甘いだけの恋愛をしてきたわけではないけれど、突然の出会いからそうなることを期待していなかったと言えば嘘になる。


誰もがヒロインになりたくて、誰もがたった一人の王子様に愛されたいのだから。
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