不誠実な恋
「今度見せたろか?何気にこの公園に子供連れて来て」
「連れて来なくて良いから。ってか、何であたしがここに通ってるって知ってるの?」
「そりゃなぁ、随分前から見とったからなぁ。いつ声掛けたろうか考えてとってん」
「…やっぱ最低」

溜息と一緒に吐き出した否定の言葉でさえ、その笑顔の前では全く効力がなくて。やるせないというよりも、夢見たがために惹かれてしまった自分を恨みたい。

「俺な、欲しいもんがいっぱいあんねん」
「そんなのあたしだっていっぱいあるよ」
「一人の女がその全部を持っててくれたら良かったんやけど、人間そうは上手く出来とらんやん?だから、俺は欲しいもんを手に入れるために頑張ってんねん」
「いや、頑張んなくて良いんじゃない?相手の女の人が可哀想」
「可哀想なことあらへん。その分ちゃんとお返しはしたっとるしな」
「どんなお返し?」
「愛したっとるやん。分割愛やけど」

都合の良すぎる主張も、侑士がすれば何故だか説得力がある。
今まで読んだ小説の中のどれよりも、侑士の生き方の方が面白い。と、一度自叙伝でも書くのを勧めてみようかと思った。

その中に、ほんの少しでもあたしが登場してくれれば嬉しい。そんな甘い夢を見ながら。
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