不誠実な恋
「侑士とのこと…許せる?」
「許せはしねぇだろうな。キッチリ二股かけてくれたんだからな」
「なら如何する?あたしはもう要らない?」
「言っただろ。決定権はお前にやるってな」


卑怯だ。


こんなに精神的に追い詰めようとするならば、いっそのこと二、三発頬をぶってくれた方が楽になるのに。

我儘なんだよ。と、いつものあの嫌味な笑いを浮かべて責めてくれれば良いのに。

「朔也とこれ以上一緒にいたら、あたしはあたしでなくなりそう」
「どんな言い訳だよ、それ」
「言い訳…かな。溺れそうなんだもの」
「はっ。もう溺れてんじゃねぇのか?」
「溺れてる人間の心理ってわかる?」
「藁をも掴みたい。ってか?」
「侑士がその藁だとしたら?」
「随分と頼りがいのある藁じゃねぇか」
「だよね」

そう。許してもらえるはずはないのだ。
これだけプライドが高い人が、本気であたしを愛していると言うのだから。



「殺したい?あたしのこと」



顔を埋めた広い胸は、どことなしか微かに震えていて。
この手で殺されるのならば本望だ。と、すっかり身を預けてしまっている女々しい自分がいる。

「この手で殺せば手に入るのか?」
「さぁ。あたしは我儘だから」
「だろうな」
「でも、殺してくれたら嬉しいかも」
「お前は、な」

罪を犯してしまう程に愛して欲しい。何もかも捨てて、あたしだけに狂って欲しい。
今更ながらにそう思ってしまうあたしは、本当に身勝手で。
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