不誠実な恋
夏の夜空を分厚い雲が覆い隠し、今にも落ちてこようとする雨が窓の外の暗闇により一層磨きをかけていく。そんな気がした。

こんな日は、決まって泣きたいくらいの重苦しい痛みがまるで鈍器で殴られたかのように後頭部に長時間留まってくれる。恒例行事のように、毎回必ず。


出来上がったまま洗濯機の中で絡み合っている洗濯物も、水を流しっぱなしにしているキッチンのシンクも全てそのままにして、侑士が買ってくれた赤いソファーに身を放り投げる。
痛みよりも優勢な息苦しさ。どちらが勝ってもあたしにすれば嬉しくはないのだけれど、どちらかと言えば痛みの方を応援してしまう。


けれど、いくらあたしが応援したところで勝つのは決まって息苦しさなわけで。痛みならば多少無理をしてでも耐えることは出来るし、鎮痛剤という便利なものもあるというのに。




「あぁ…もう無理。侑士…早く帰ってきて…」




日付を超える数分前。この時間になっても侑士がここに居ないということは珍しい。
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