不誠実な恋
急な用事でも入ったのだろうか。と、テーブルの上に忘れていたかのように置かれている携帯電話へと手を伸ばしかけた。
そして慌てて手を引き戻し、転がり落ちそうになる体を咄嗟にその手で支えながら週末の約束を思い出した。
「今日…土曜だっけ。帰ってこないか」
この立場上、週末のたった二日間だけ家に帰ることを責められるはずもなく、たとえ虚しさと寂しさを噛み締めることになったとしても、ソファーの上に掛けられた薄い布切れを握り締めて耐える他手段はない。
同じ愛人の中には付き合いは長いけれど月に二、三度しか会うことが出来ない人もいれば、昼間の数時間しか会えない人だっている。
そんな人達に比べれば、あたしなんかは贅沢者なのだ。これ以上何かを望めば当然神様は贅沢者のあたしに罰を与えるだろう。
だから、望んではいけないし責めてもいけない。
おそらく…というか絶対的に、世間一般に責められるべき立場なのは、週末に侑士を連れて行ってしまう奥さんではなく、当たり前のようにウィークデーの夜を一緒に過ごしているあたしなのだから。
浅い呼吸の中から酸素を探し出すことさえ面倒で、握り締めていた布切れを放してだらりと腕を垂らしたまま瞼を閉じた。
キッチンから聞こえる水音が窓の外でとうとう降り始めた雨の音によく似ている。
雨は…大嫌いだ。
そして慌てて手を引き戻し、転がり落ちそうになる体を咄嗟にその手で支えながら週末の約束を思い出した。
「今日…土曜だっけ。帰ってこないか」
この立場上、週末のたった二日間だけ家に帰ることを責められるはずもなく、たとえ虚しさと寂しさを噛み締めることになったとしても、ソファーの上に掛けられた薄い布切れを握り締めて耐える他手段はない。
同じ愛人の中には付き合いは長いけれど月に二、三度しか会うことが出来ない人もいれば、昼間の数時間しか会えない人だっている。
そんな人達に比べれば、あたしなんかは贅沢者なのだ。これ以上何かを望めば当然神様は贅沢者のあたしに罰を与えるだろう。
だから、望んではいけないし責めてもいけない。
おそらく…というか絶対的に、世間一般に責められるべき立場なのは、週末に侑士を連れて行ってしまう奥さんではなく、当たり前のようにウィークデーの夜を一緒に過ごしているあたしなのだから。
浅い呼吸の中から酸素を探し出すことさえ面倒で、握り締めていた布切れを放してだらりと腕を垂らしたまま瞼を閉じた。
キッチンから聞こえる水音が窓の外でとうとう降り始めた雨の音によく似ている。
雨は…大嫌いだ。