不誠実な恋
真っ白なその部屋は暗闇に慣れきってしまっていたあたしの目にはとても眩しく映り、何度か目を瞬かせているうちに叫ぶことを止めてしまっていたことに気付いた。
「さぁ、とりあえず何処が痛いか訊こかな」
「…腕、足、頭」
「えらい素直やん。右側?左側?」
「左側。肩も痛い」
「全部打撲と擦り傷やろな。頭は検査する準備してくれとるからええとして、お腹とか内側痛ない?」
「ここが…痛い」
掴んだ胸元に残っていた血がじわりと掌に染み、痛さと言うよりも息苦しさを感じた。
はじめは懸命に酸素を取り入れようと浅い呼吸を繰り返していたけれど、次第にそれさえも面倒になり両手で顔を覆って息をすることも光を見ることも拒絶してしまった。
そんなあたしの頭をゆっくりと撫でながら、お腹に聴診器を当てていた侑士の手が止まる。
そんな些細な行動でさえ過剰に感じ取れるくらいにその部屋はとても静かで、まるで外部を遮断してしまった空間のようだった。
「ちゃんと息してや。苦しいだけやで」
「…にたい」
「ん?」
「このまま死にたい」
「仮にも医者の前でそんなこと言わんといて」
「だって…だって翔太はもう助からないんでしょ?だったらあたしも一緒に死にたい」
「何もかも一緒がええねんな、最近のカップルは」
端から見ればそう見えるだろうか。冷静にそんなことを考えながら、指の間から見えた侑士の大きな手にゆっくりと手を伸ばす。
触れた指先は、いつも傍にあるものよりも随分と冷たかった。
「さぁ、とりあえず何処が痛いか訊こかな」
「…腕、足、頭」
「えらい素直やん。右側?左側?」
「左側。肩も痛い」
「全部打撲と擦り傷やろな。頭は検査する準備してくれとるからええとして、お腹とか内側痛ない?」
「ここが…痛い」
掴んだ胸元に残っていた血がじわりと掌に染み、痛さと言うよりも息苦しさを感じた。
はじめは懸命に酸素を取り入れようと浅い呼吸を繰り返していたけれど、次第にそれさえも面倒になり両手で顔を覆って息をすることも光を見ることも拒絶してしまった。
そんなあたしの頭をゆっくりと撫でながら、お腹に聴診器を当てていた侑士の手が止まる。
そんな些細な行動でさえ過剰に感じ取れるくらいにその部屋はとても静かで、まるで外部を遮断してしまった空間のようだった。
「ちゃんと息してや。苦しいだけやで」
「…にたい」
「ん?」
「このまま死にたい」
「仮にも医者の前でそんなこと言わんといて」
「だって…だって翔太はもう助からないんでしょ?だったらあたしも一緒に死にたい」
「何もかも一緒がええねんな、最近のカップルは」
端から見ればそう見えるだろうか。冷静にそんなことを考えながら、指の間から見えた侑士の大きな手にゆっくりと手を伸ばす。
触れた指先は、いつも傍にあるものよりも随分と冷たかった。