不誠実な恋
後ろから回された侑士の手がページを捲り、懐かしむ暇も無く高校時代の思い出が足早に流れて行く。
時には感傷という滅多に浸らないものに浸ってみたい時もあるのだ。と、無理矢理に手を止めさせたページで彼がある一枚の写真を指差した。
「おっ、ミチルちゃんや。相変わらず可愛いなぁ」
「そりゃぁねぇ、高校時代の写真ですから」
「そりゃそうか。でも、今も可愛いんやろなぁ」
「さぁ。ミチルにはあれ以来一回も口利いてもらえんかったし、こっち帰って来て会うことも無くなったし」
「あらあら。案外根に持つ子やってんな。もっとあっけらかんとしとる子かと思っとったけど」
「そりゃぁ、もう。ミチルは侑士が大好きでしたから」
写真の中で無邪気に微笑むあたしの親友だったミチルは、とても可愛くて、それなりに男の子達からも人気があって。
面倒だ。と、女の子達との関わり合いを極力持たないようにしていたあたしにどんな気紛れか声を掛け、唐突に「あたし達親友になれるよ!」と大々的に宣言した変わり者だった。
それからあの日まで、あたし達は親友だった。そう、あの卒業式の日までは。
「せやかてな、俺はメイが好きやってんもん」
「せやかてな。とちゃうねん」
「何やの。メイかて喜んで泣いてたやん」
「あれは喜んでたんとちゃいます。びっくりしすぎて涙が出たんです」
「あー、はいはい。相変わらず屁理屈ばっか捏ねるやっちゃな」
高等部の卒業式だったあの日。
あの日の出来事は仲間内ではとても有名な出来事で。
いや、仲間内だけではなく、あたし達と同時期に立誠学園の高等部に通っていた人達、もしかしたら中等部に通っていた人達の間でも有名かもしれない。
それほどに衝撃的で、ありえない事件だった。
時には感傷という滅多に浸らないものに浸ってみたい時もあるのだ。と、無理矢理に手を止めさせたページで彼がある一枚の写真を指差した。
「おっ、ミチルちゃんや。相変わらず可愛いなぁ」
「そりゃぁねぇ、高校時代の写真ですから」
「そりゃそうか。でも、今も可愛いんやろなぁ」
「さぁ。ミチルにはあれ以来一回も口利いてもらえんかったし、こっち帰って来て会うことも無くなったし」
「あらあら。案外根に持つ子やってんな。もっとあっけらかんとしとる子かと思っとったけど」
「そりゃぁ、もう。ミチルは侑士が大好きでしたから」
写真の中で無邪気に微笑むあたしの親友だったミチルは、とても可愛くて、それなりに男の子達からも人気があって。
面倒だ。と、女の子達との関わり合いを極力持たないようにしていたあたしにどんな気紛れか声を掛け、唐突に「あたし達親友になれるよ!」と大々的に宣言した変わり者だった。
それからあの日まで、あたし達は親友だった。そう、あの卒業式の日までは。
「せやかてな、俺はメイが好きやってんもん」
「せやかてな。とちゃうねん」
「何やの。メイかて喜んで泣いてたやん」
「あれは喜んでたんとちゃいます。びっくりしすぎて涙が出たんです」
「あー、はいはい。相変わらず屁理屈ばっか捏ねるやっちゃな」
高等部の卒業式だったあの日。
あの日の出来事は仲間内ではとても有名な出来事で。
いや、仲間内だけではなく、あたし達と同時期に立誠学園の高等部に通っていた人達、もしかしたら中等部に通っていた人達の間でも有名かもしれない。
それほどに衝撃的で、ありえない事件だった。