不誠実な恋
「バカらしい」
「もうじき諦めよるって」
「三人目が生まれたばっかなのに?」
「それとこれとは話が別」


嫌でも目に入る左手の薬指にはめられたリング。

何を主張したいのかはわからいけれど、話が別と言うならばこの目に入らないようにしてほしい。それが最低限のマナーというものではないだろうか。


抱かれる腕に頭を擡げると、そこから香るのは嗅ぎ慣れたボディーソープの香り。わざと家で使う物とは違う香りを好んで身に纏うのはいただけない。

それが香水ならば多少なりとも言い訳は出来るだろうけれど、ボディーソープはまずいのではないだろうか。明らかに「何かしてきました」そう主張しているようなものなのだから。


けれど、この男は平気でそれをやってのけてくれる。
しかも、あたしにはよくわからない信念を持って。

ここまでくれば尊敬どころの話ではない。
そう思うのは、「奥さん」と呼ばれる身ではないからだろうか。


とにかくこの男は、誰がどう見ても最低な男なのだ。
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