【完】ベストフレンド ‐武蔵野 健吾‐
マジかよ……。
信吾が学校を辞めて、青森へ……?
「青森はお袋の故郷でさー、本州最北端の水族館がある町なんだ。 どうだ、羨ましいだろー?」
「う、羨ましいとかそういうのはどうでもいいけどっ……お前、マジで青森に……?」
「おう、本気と書いてマジだぜ。
つーか『どうでもいい』とかひどくね? イルカショーとかめっちゃ凄いんだよ?」
「いや……わりぃ、行ったことねぇからわかんないわ」
「あはは、だよなぁ」
俺の言葉に、信吾は尚も寂しそうに笑う。
そして、差し出していた本を、更に前へと出す。
「まぁとにかく、夏休みの間に引っ越すことが決まってんだ。
だからこれはお前にやる。 これ見てさ、色々勉強しろよ。 な、四聖獣の玄武ちゃん?」
……四聖獣。
その言葉を聞いたのも、久しぶりだ。
でも……こんなの、納得いかねぇよ。
「……別に、お前が青森へ行く必要なんかないんじゃねぇの?」