【完】ベストフレンド ‐武蔵野 健吾‐


母親が青森へ戻るとしても、信吾はこっちに残ってもいいんじゃないか?

龍輝みたいに一人暮らししたり……もしくは、龍輝の家に一緒に住んじまうとか。


高校1年生って、まだまだガキかもしんねーけど……でも龍輝は、一人で暮らしてる。

アイツの暮らしを見ていると、『大丈夫だろ』って思えてしまう。




「龍輝みたいに、一人で住めば……」

「残念ながら、それは無理なんだよなぁ」

「……なんでだよ」




曖昧な笑顔で俺を見た信吾は、ゆっくりと言葉を続ける。




「お袋と妹を守っていくって決めたからさ、『一人で残る』っていう選択肢は、初めから持ってないわけ」

「……っ……」

「いつかはまたこっちに来るかもしれねーけど、少なくとも『今』じゃないよ」




決してブレることのない答えに、言葉を失う。

熱い男だからこそ、信念を貫き通すんだ……。




「わりぃな、健吾。 お前と一緒に居るのはマジで楽しいけどさ、やっぱり家族が大事なんだよ」




家族が大事。

当たり前の言葉だけど、それでも俺は……俺は、信吾がそばに居てくれることを、望んでしまう。


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