【完】ベストフレンド ‐武蔵野 健吾‐
「あー……夏休みの間には引っ越すらしいけど、詳しいことは聞いてない」
「聞かないの?」
「……別に、聞かなくていいんじゃねーの。
何かあれば信吾が言ってくるだろ」
……メールすりゃあ普通に返事は来ると思うけど、『元気でな』とか言われたのに、今日すぐに連絡は、ちょっとな……。
信吾が何か言ってきたら応えればいい。
と、そう思ったんだが……、
「待ってるだけなんてつまんないじゃん。 よし、俺が電話する!!」
「いやいや、ここは俺が電話するべきだろ?」
「あー……俺が電話します、はい」
……手を上げた大雅に続き、龍輝も手を上げる。
それを見た朔也が、イヤそうな顔をしながらも手を上げた。
明らかに『どうぞどうぞ』の流れじゃねーか……。
つーか朔也、イヤならやるなよ。
そして当然のように全員が俺を見るというね……。
「……俺は、やんねーからなっ」
それだけを言い放ち、俺は一人、マンションをあとにした。