【完】ベストフレンド ‐武蔵野 健吾‐
『まぁでも、俺はもう黄川田じゃないんだけどな』
「あ……」
……そっか、信吾の親は離婚して……信吾は黄川田じゃない別の名字に変わったんだ。
『でもな、聞いて驚け』
「……ん?」
『お袋の旧姓な、『コガネイ』っつーんだよ。
黄金に井戸の井で黄金井(コガネイ)。 黄川田より黄龍っぽくね?』
「うわっ、マジかよ!! すげーじゃん!!」
黄金って、まさに『黄龍』だ。
すっげ……名字が変わっても、信吾はやっぱり黄龍なんだ……。
『黄川田も黄金井も、あんまり聞かない名字じゃん?
親父とお袋の出会ったきっかけがこの珍しい名前だったらしい。
まぁ結局別れちまったけど、でもさ、それでも俺は黄龍なんだよ。 すげーだろ? 拝んでもいいぜ?』
「ははっ」
『おいコラ、なんだその馬鹿にしたような笑い!!
俺は中心的存在なんだから、ちゃんと尊敬しろよ』
「はいはい、凄い凄い」
と、そんなことを言って俺たちは笑い合う。
久しぶりに話して、笑って、止まることのない会話に楽しさは増していく。
やっぱり、信吾との時間が1番楽しい。
ずっとこんな風に話していけたらいいのにな。 と、思うけど……信吾は明日、行っちまうんだよな……。