キスから始まらない恋。
「す、すみません…道開けてもらえますか…すみませんありがとうございます」
遅刻はしなかったものの、すでに座っている生徒たちの間を謝りながら通った時はさすがに恥ずかしかった。
パッともなんともない私。
男子の視線なんか当然集まるわけがなく、邪魔者扱いされる始末。
「……ふ~」
やっと座れたその席も、どうやら私の両側の席の男子が仲が良いらしく、私が座ったとたん面白くなさそうに舌打ちされた。
「すみません…」
なんか私、今日謝ってばっかりだなぁ。
素敵な出会いがあるかもー!……なんて、期待してた自分に蹴りを入れたい。
「……現実を見た方がいいか……」
私の呟きは、春のざわめきの中に空しく消えていった。
こうして、私の高校生活は寂しく始まってしまったのである。