キスから始まらない恋。
大丈夫。きっと、うまくいく。
始まる前に、親友はそう言ってくれた。
私はその言葉を何度も何度も頭の中で繰り返して、心臓の音を紛らわそうとしていた。
プルルルル……
「おーい電話なってるぞー」
「だれか取れよ――」
室内にかかっていた電話が、時間を告げる。
近くにいた私は、電話を取って耳にあてた。
「はい」
「お客様、残り10分となりましたので、お知らせいたします」
「分かりました」
「10分経ちましたら、また改めてお知らせいたしますね」
「はい」
ガチャ
「姫谷――電話なんだった―?」
「残り10分だって」
私がそう告げると、
げーまじかよーとか短すぎーとか二次会いこーぜーとかそれいいねーとかいう声で埋め尽くされた。
私は、なんとなく彼の方を向いた。